寝付きをよくする


眠る前の誓いというのは、今日一日の無事を感謝し、明日もよい日であることを祈ることである。多くの国では、宗教の教えに従って、神仏に感謝と安眠の願いを祈る風習がある。これで心が安らかに眠りの世界へ入れるのである。

これは信仰を持たず、合理的な生活に慣らされてしまった私たち日本人には馬鹿らしいことかもしれないが、とても大切なことである。なぜなら一日いろいろなことがあり、感情面でも必ずしも穏やかなことばかりでもないところで、そのまま眠りに入ると、朝までそれを引きずったり、ひどいときにはその感情を増幅してしまうからである。これを一時切り、新たに心地よく落ち着いて眠りに入らなくては、十分に休んで、疲れを取ることができない。

ヒューマンウェア研究所の清水英雄氏は、このときに三十ばかりの今日あったよいこと、感謝できることを言って眠ることを勧めている。これによって、あなたはよい人となって眠れる。すると眠りの中でよい方向に伸びて、爽快に目覚めることができる。これを毎日毎日繰り返すと、一年であなた自身が大きく変わっていく。

福島哲司著 『朝型人間はクリエイティブ』(ビジネス社 1993年)p.164


ベッドに入ったのに暗闇の中でちっとも眠りに落ちることができないことがある。
そんなときは漂う不安にとりあえずのピリオドを打つことにしている。

書くことに喩(たと)えれば、

書き始めてしまった文章はそのままにせず、とりあえずの述語をあてがっておく。自分でしっくりくるものが思いつけない時は結局それが自分のちからの限界なのだから、仕方がない。何もせずにおいておくくらいならしっくりこなくてもその時に自分が出しうる最高の答えを出しておく。そうすれば次の機会にそこから再開できる。

読むことなら、

本を読み始めて、その本が自分にはとても読み続けることができないものだとわかったら、その時点でその本から得られたことをページの余白に書き記し、栞(しおり)を挟んでおく。痕跡を残しておけば、それが次回のガイド(guide; 道しるべ)になる。“足跡”を刻んでおけば、その本の存在は思考の網の目のどこかにリンクされ、時の風化をまぬがれる。そしてしかるべき時期が来たときに再び姿を現す。

その日に感じたことや思いついたこと、ずっと考えていたことが収斂(しゅうれん)を見たときなどを、そのまま不安定な短期記憶空間に漂わせておくのではなく、かりそめであってもいいから日次決算して外部記憶に固定化してしまえば、脳ミソは空っぽになり、気持ちよく眠りに落ちることができる。