進めば進むほどアナログになっていく

「え? 本当ですか? もっと若いかと思ってましたっ」

年齢を聞いて驚いた。

昨年4月にさる集まりで知り合った方との雑談での一こま。都内の高校で教鞭を執っている彼は生徒とは携帯を教えあう仲で、生徒の相談事に応じて校内で連絡を取り合って面談に持ち込んだりもするという。金八先生の先を行っている。

学校ではコンピュータ室の室長も勤めるほどコンピュータにも造詣が深く、かといって「おたく」なディープさではない。ツールとしてのコンピュータの意義や役割、そして活用方法の研究に余念がない。自分の方向性と重なる部分が大きい。そんなこともあって関係が続いている。

知り合った当日に年齢を聞いたはずだったが、最近になって改めて本人からその数字を言われて、思っていたよりも大きな数字だったことに驚いた。

知りあって間もない人に接する場合は職業や役職や年齢などといった客観的な切り口をベースにせざるを得ない。それが関係が進んでお互いのことを深く知っていくにつれ、自分の中に相手像が構築されていく。それは人に説明することが困難な自分だけの思考・認知のベースであり、言葉で表現しきれるものではない。

相手と交わした会話の内容をすべて漏らさず記憶していたとしても、その集積がそのまま相手像になるわけではない。必要に応じて共通項でくくったり良く似たモデルを参照して変換を行いながら、それは注意深く構築されていく。

いかにデジタル技術が進展しようとも、人に備わったこのアナログ化(類推)能力を超えることはできない。

お互いに意志疎通ができていれば年齢などあまり関係ないのではないか(というのは忘れた者の言い訳)。