「終身雇用」に期待できるか?


「終身雇用」の保証はできないが、「終身雇用に値する能力を持った人材」を育てることに全力をあげた。私は社内で千回以上、「人を解雇するのではない。不要なポストを廃止した結果、その職に就いている人もいらなくなったのだ」と演説した。


人は勝手なもので、よっぽど近しい人でない限り、災害を被っている人を見ても「自分は大丈夫だ」「自分には関係ない」と思ってしまう。新聞の社会面なんかを見ているといつもそう思う(政治面や経済面はあまりにも遠すぎてピンと来ない)。実際のところ自分は大丈夫だし、関係もないのであれば、そう思うことは間違いではない。でも、「もし自分が同じ立場に陥ったら」と想像してみるのも悪くない。

例えば、管理される立場だけでなく、管理する立場の心境も想像してみる。同僚を見る目が変わる。「こいつは部下にしてみたいな」とか「あいつは口ばっかりのえーかっこしーやなぁ」ということがわかったりする(口に出したらダメだけど)。実体験には及ばないものの、想像するだけでも脳内では神経伝達物質ニューロン)によるシナプス伝達が活発になり、今まで考えが及ばなかった荒野の開拓が進む。脳内フロンティアスピリット。

人の考え方は少なからず立場の制約を受ける。「部長なりの」「課長なりの」「ひら社員なりの」立場に応じた考え方が期待される。暗黙の期待。もしかしたら、そんな期待は誰も抱いていないかも知れないのに。仮想プレッシャーシンドローム

ところで、「終身雇用」という言葉は実態を表していない気がする。どちらかと言うと、ひたすら会社にしがみつく「執心雇用」だったり、定年まで安らかに過ごしたい「就寝雇用」だったりする方がぴったりくる。そもそも「終身」(一生涯)なのに定年があるのは自己矛盾。

言葉だけは期待を裏切って淡々と独り歩きする。