バランス戦略か、アンバランス戦略か?


S T R A T E G I C / 戦 略 性

戦略性という資質によって、あなたはいろいろなものが乱雑にある中から、最終目的にあった最善の道筋を発見することができます。これは学習できるスキルではありません。これは特異な考え方であり、物事に対する特殊な見方です。

ほかの人には単に複雑さとしか見えないときでも、あなたにはこの資質によってパターンが見えます。これらを意識して、あなたはあらゆる選択肢のシナリオの最後まで想像し、常に「こうなったらどうなる? では、こうなったらどうなる?」と自問します。このような繰り返しによって先を読むことができるのです。

そして、あなたは起こる可能性のある障害の危険性を正確に予測することができます。それぞれの道筋の先にある状況がわかることで、あなたは道筋を選び始めます。行き止まりの道をあなたは切り捨てます。まともに抵抗を受ける道を排除します。混乱に巻き込まれる道を捨て去ります。そして、選ばれた道──すなわちあなたの戦略──にたどり着くまで、あなたは選択と切り捨てを繰り返します。そしてこの戦略を武器として先へ進みます。

これが、あなたの戦略性という資質の役割です。問いかけ、選抜し、行動するのです。

マーカス・バッキンガム、ドナルド・O.クリフトン著/田口俊樹訳
さぁ、才能に目覚めよう』(日本経済新聞社) p.151


何にしても「ばっかりやる」のが大事だと思う。1つのことばっかりやっていれば、当然その分野に強くなる。言い方を変えれば、強みを伸ばすことである。弱点の克服に精を出しても、行き着く先は特徴のない平均的な目立たぬ存在にしかなれない。そんなことを考えていたらこの本に出会った。

最後の資質は「戦略性」。

5日間にわたって5つの資質を紹介してきたが、これは格好の自己紹介、あるいは自己分析になると思う。自己分析とは自分の目で見た自分ではなく、自分以外のフィルタを通して見た自分を知ろうとする行為である。自分で思っているだけの自己分析は自己暗示と区別が付かない。

それにしても偏っている。34の資質の中には「共感性」や「コミュニケーション」、「社交性」といった人間関係にまつわる資質も含まれているのだが、見事にどの資質も持ち合わせていない(もちろん、たった180の質問に答えただけで得られた結果に過ぎないわけで、当然ブレもあるとは思うが)。

その昔、ロールプレイングゲームRPG)というものに浸かっていた頃、「ゆせそま」が一番バランスが取れているので良い、というような説が多数を占めていた。「ゆせそま」とは、某RPGにおける用語で、勇者(主人公)、戦士(肉弾戦の要)、僧侶(回復の呪文)、魔法使い(攻撃の魔術)それぞれの頭1文字を取ったものであり、この4人で闘えば、それぞれの弱みを補い合い、各々の強みを最も発揮できる、とする戦略フォーメーションを指す。

しかし、弱みという各メンバーが持つリスクを分散できる反面、それぞれの強みも分散してしまう。例えば、戦士が渾身の力で剣(つるぎ)を振り下ろそうとしても、ひ弱な魔法使いがひん死の重傷であれば、彼をモンスターからの攻撃から守ることを優先しないといけないかも知れない。

それでは、「ゆせせせ」というのはどうだろう。戦士ばかりがぞろぞろいれば、回復とか守るといったことを気にする以前に迫り来るモンスターたちを次々となぎ倒すことができる。手の込んだ戦略は要らない。戦略がないことが「ゆせせせ」の戦略である。

重要なことは、組み合わせが生み出す特性である。特性とは「ばっかりやる」その中身である。すなわちトンガリや角があるかどうかが問題で、特に目立った強みがなければ埋もれてしまう。「ゆままま」では強力な攻撃呪文(火炎や雷など)で波状攻撃をくり出すことができる反面、相手からの攻撃にはめっぽう弱い。また、呪文による攻撃を受け付けないモンスターには太刀打ちできない。そこで、この4人に「ゆせせせ」が加われば、お互いの強みが活かされる。

ところが、しばらくすると結局同じことの繰り返しになることに気づく。つまり、まず最初に、何かに偏ったアンバランスな状態からバランスと取れた状態に移り変わろうとする力が働き、ある程度バランスしてくると、今度はバランスされた状態からアンバランスな状態を自ら指向するようになる。

以前、「飽きる」ことは偏在性(アンバランス)を回避するためのプログラムである、というようなことを書いたが、逆に均衡状態(バランス)からも自由である方がいい。人は生きている限りは常に変化し続けているわけで、同様に変化する外部環境に適応していくには自分を意識的に変えていく必要がある。変えていくためのきっかけあるいはトリガーとなるのが不安であり危機感である。不安や危機感はバランスからは生まれない。アンバランスであるがゆえに不安になり、危機感が生まれる。

バランスが取れている時は自己完結の陥穽(かんせい)にはまりやすい。自分で何でもできる(と思い込んでいる)から、行動が後手に回る。気づいたときには手遅れになる。

「ゆせそま」のままで大丈夫だろうか。


なぜ、飽きる?

「資質の組み合わせがまったく同じ人っているのかな?」
「34の資質のうちから5つを選び出すパターンは全部で約3300万通りあるそうなので、事実上まったく同じ資質を持ち合わせる人はいないんじゃないか、と書いてある」
「みんなそれぞれが違うからバランスが理想になる。バランスはハナニン(鼻先のニンジン)みたいなものかも」