元上司の退職
「今日も何時に帰れることやら…」すっかり日が暮れた頃、オフィスビルのすぐ隣にあるコンビニの前でいつものようにタバコを吸っていた。
そこへ上司のKマネージャが現れた。彼はここところ連日午前様。睡眠は3時間。
「お疲れさまです」
「お疲れさん」傍らにやってきてタバコに火をつけ、深く吸い込むとゆっくりと吐き出した。
夜風が冷たい。思い切って訊いてみることにした。
「Kマネージャ、仕事は、楽しいですか?」
「…おもしろいな。…まぁ、かなんなーと思うこともあるけどな」さらに尋ねる。
「会社を辞めたい、と思ったことはありますか?」
「何回かある。でも、経験するうちにそれは山谷だということに気づいた。
山を越えれば谷もある」
参考:1999年12月17日(金)の日記
自分にとっての最後の上司だったKマネージャもこの4月で会社を去ったという。
彼にとっての最後の谷はさぞかしなるクレバスだったのだろうか。
山の高さと谷の深さは進めば進むほど高く深くなっていく。
進むべき道は「ここにしかない」と思うか、「ほかにもある」と思うか。
正解はないが回答は迫られる。